ヒューマノイド・ロボティクス2022夏の学校

2022年9月10日 於 東京大学本郷キャンパス

日本ロボット学会ヒューマノイド・ロボティクス研究専門委員会主催


新着情報

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趣旨

人型ロボットの研究は、世界的にもう何度目かの停滞期に入っています。 モータと構造体を紡いで人の形をした機械を作る技術を持てても、それを人の如く動かす技術に辿り着くことはやはり困難であると、多くの研究者が改めて思い知らされているのではないかと想像します。 もう一つ、機械を人の形にすることの意味・意義を端的に示した開発事例もまだありません。 技術と意義に関するこの二つの問いは、恐らく答えが得られるとしたら同時であり、そのために同時に探求しなければならないものだと考えます。

今年の夏の学校では、人型ロボットの探求に取り組む上での三つの土台である「力学」「デザイン」「行動生成」を話題に採り上げ、それぞれについてこれまで尽力されてきた特別講師をお招きしご講義頂きます。 それらの話題を切り口として、人型ロボットの諸問題を深く掘り下げるために参加者全員でディスカッション致します。

また、今年も受講者からの研究発表を募ります。 1件あたり30~60分程度を想定しております。 最先端で活動している一流研究者から質の高いフィードバックを戴けるチャンスですので、奮ってご応募下さい。
※公的な発表記録にはなりませんのでご注意下さい。
※発表希望者多数の場合は主催者にて選抜させて頂きます。

国内で志を同じくする人々のコミュニティ形成も本企画の主眼の一つです。 皆様に能動的にご参加頂けることを委員一同願っております。

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日時・場所・費用

9/10(土) 9:00~17:00

東京大学本郷キャンパス 工学部2号館 221号講義室

※対面による開催のみと致します。遠隔配信および録画配信は致しません。

受講者お一人当たりテキスト代として1,000円をお支払い頂きます(領収書を発行致します)。

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時間割

9:00- 9:05開会挨拶
9:05-10:35講義1: 非平滑力学へのお誘い 菊植亮先生(広島大学)
10:40-12:10講義2: ヒューマノイド動作計画 吉田英一先生(東京理科大学)
12:10-13:00昼休み
13:00-14:30講義3: HRPシリーズヒューマノイドロボットの設計開発 金子健二先生(産業技術総合研究所)
14:35-16:05聴講者による発表
16:15-16:55ディスカッション
16:55-17:00閉会挨拶,解散

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講義

講義1: 非平滑力学へのお誘い

菊植亮先生(広島大)

非平滑力学とは,右辺が非平滑な状態方程式で表される力学系を取り扱う理論体系であり,微分包含式という数式を用いて表現される.この考え方に基づくと,摩擦接触,スライディングモード制御,油圧システム,様々な飽和付きアルゴリズムなどを,見通しのよい連続時間表現で記述できる.本講義では,シミュレーションや制御への利用を念頭において,非平滑力学をツールとして用いた考え方について概説する.

主なトピック:微分包含式(differential inclusions),法錘(normal cone),集合値関数,代数ループ

参考文献
Aubin and Cellina, "Differential Inclusions: Set-Valued Maps and Viability Theory", 1984.
Acary and Brogliato, "Numerical Methods for Nonsmooth Dynamical Systems: Applications in Mechanics and Electronics", 2008.
Brogliato, "Nonsmooth Mechanics: Models, Dynamics and Control", 2016.
Kikuuwe, "Torque-Bounded Admittance Control Realized by a Set-Valued Algebraic Feedback", IEEE Transactions on Robotics, 35(5):1136-1149, 2019.
Kikuuwe and Brogliato, "A New Representation of Systems with Frictional Unilateral Constraints and Its Baumgarte-Like Relaxation," Multibody System Dynamics, 39(3):267-290, 2017.
Kikuuwe, Yasukouchi, Fujimoto, and Yamamoto, "Proxy-Based Sliding Mode Control: A Safer Extension of PID Position Control," IEEE Transactions on Robotics, 26(4):670-683, 2010.
Kikuuwe, Takesue, Sano, Mochiyama, and Fujimoto, "Admittance and Impedance Representations of Friction Based on Implicit Euler Integration," IEEE Transactions on Robotics, 22(6):1176-1188, 2006.
Smirnov, "Introduction to the Theory of Differential Inclusions", 2002.

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講義2: ヒューマノイド動作計画

吉田英一先生(東京理科大学)

動作計画 (Motion Planning) は一般に、与えられた環境下で、ある初期位置から目標位置に、環境に妨げられずにロボットの状態の遷移させる運動を計画する手法である。それまでの古典的なC-Space上の解法やポテンシャル法に続き、90年代にランダムサンプリング法が提案され、2000年以降は計算機能力の発展に伴い多自由度のヒューマノイドにも適用されるようになった。簡易モデルでの経路計画と全身運動の軌道への変換という基本的な2段階の計画から、運動学や動力学を直接組み込む方法に発展し、様々なヒューマノイドで実証されている。また、通常は回避すべき環境との干渉を積極的に利用する接触計画や、物体を移動させるマニピュレーションへの適用、計測環境に基づく計画など、ヒューマノイド研究での適用も多岐にわたっており、本発表ではこれらを概説する。近年動作計画と機械学習技術との融合も試みられている一方、実装や実証の煩雑さからヒューマノイドへの適用が難しいとの認識もある。ヒューマノイド動作計画は魅力的な研究分野であり、今後を担う若手の研究者にも興味を持っていただきたく、ぜひ浅学な立場ではあるが今後の展望についても議論を提起したい。

参考文献
Yoshida, E.; Kanoun, O.; Esteves, C.; Laumond, J.-P.; Yokoi, K., "Task-driven Support Polygon Reshaping for Humanoids," in Proceedings of 6th IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots, pp. 827-832, 2006
Yoshida, E.; Esteves, C.; Belousov, I.; Laumond, J.-P.; Sakaguchi, T.; Yokoi, K., "Planning 3D Collision-Free Dynamic Robotic Motion through Iterative Reshaping," IEEE Trans. on Robotics 24(5), 1186-1198, 2008.
Yoshida, E.; Poirier, M.; Laumond, J.-P.; Kanoun, O.; Lamiraux, F.; Alami, R.; Yokoi, K., "Pivoting based manipulation by a humanoid robot," Autonomous Robots 28(1), 77--88, 2010.
Harada, K.; Yoshida, E.; Yokoi, K., "Motion Planning for Humanoid Robots," Springer, 2010.
Kanoun, O.; Laumond, J.-P.; Yoshida, E., "Planning Foot Placements for a Humanoid Robot: a Problem of Inverse Kinematics," International Journal of Robotics Research 30(4), 476-485, 2011.
Lengagne, S.; Vaillant, J.; Yoshida, E.; Kheddar, A., "Generation of Whole-body Optimal Dynamic Multi-contact Motions," International Journal of Robotics Research 32(9-10), 1104-1119, 2013.
Kanehiro, F.; Yoshida, E.; Yokoi, K., "Efficient reaching motion planning method for low-level autonomy of teleoperated humanoid robots," Advanced Robotics 28(7), 433-439, 2014.
Yoshida, E.; Kanehiro, F.; Laumond, J.-P., "Whole-Body Motion Planning," in Humanoid Robotics: A Reference, Ambarish Goswami & Prahlad Vadakkepat, ed., Springer, 2018.

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講義3: HRPシリーズヒューマノイドロボットの設計開発

金子健二先生(産業技術総合研究所)

本講義では、産総研が開発に参画してきたHRPシリーズのヒューマノイドロボットの設計開発について述べる。「働く人間型ロボット」をコンセプトに、これまでHRP-2、HRP-3、HRP-4C、HRP-4、HRP-5Pなどを開発してきたが、開発の歴史を振り返ると共に、各ロボットの設計コンセプト、採用した機構などについて述べる。

主なトピック: 人型ロボットのハードウェア設計、HRPシリーズヒューマノイドロボット、機構、システム設計

参考文献
K. Kaneko, et al, “Design of Advanced Leg Module for Humanoid Robotics Project of METI,” Proc. of IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation (ICRA2002), pp.38-45, 2002.
K. Kaneko, et al, “Design of Prototype Humanoid Robotics Platform for HRP,” Proc. of IEEE Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems (IROS2002), pp.2431-2436, 2002.
K. Kaneko, et al, “Humanoid Robot HRP-2,” Proc. of IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation (ICRA2004), pp.1083-1090, 2004.
K. Akachi, et al, “Development of Humanoid Robot HRP-3P,” Proc. of IEEE-RAS Int. Conf. on Humanoid Robots (ICHR2005), pp.50-55, 2005.
K. Kaneko, et al, “Development of Multi-fingered Hand for Life-size Humanoid Robots,” Proc. of IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation (ICRA2007), pp.913-920, 2007.
K. Kaneko, et al, “Humanoid Robot HRP-3,” Proc. of IEEE Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems (IROS2008), pp.2471-2478, 2008.
K. Kaneko, et al, “Cybernetic Human HRP-4C,” Proc. of IEEE-RAS Int. Conf. on Humanoid Robots (ICHR2009), pp.7-14, 2009.
K. Kaneko, et al, “Humanoid Robot HRP-4 - Humanoid Robotics Platform with Lightweight and Slim Body -,” Proc. of IEEE Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems (IROS2011), pp.4400-4407, 2011.
K. Kaneko, et al, “Humanoid Robot HRP-2Kai - Improvement of HRP-2 towards Disaster Response Tasks -,” Proc. of IEEE-RAS Int. Conf. on Humanoid Robots (ICHR2015), pp. 132-139, 2015.
K. Kaneko, et al, “Humanoid Robot HRP-5P: an Electrically Actuated Humanoid Robot with High Power and Wide Range Joints,” IEEE Robotics and Automation Letters, Vol.4, Issue 2, pp.1431-1438, 2019.

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参加登録

参加希望される方は、こちらのフォームにてお申込み下さい。 参加者が100人に達した時点で締め切らせて頂きます。

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お問い合わせ

日本ロボット学会ヒューマノイド・ロボティクス研究専門委員会委員長 杉原知道
zhidao[at]ieee.org

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